猿猴の誓い
むかしむかし、宗林寺(下口羽根布集落)に足の速い立派な馬がいました。
出羽川のほとりにある草原に放していたある日のこと、その馬が大きな鳴き声をあげて、境内に走って帰ってきました。
慌ただしい物音に、住民が集まってみると、馬のしっぽの毛に巻き付いた、赤ちゃんのような大きさの、不思議な生き物が絡まっていました。
その見たこともない姿の生き物に、住民がわいわい騒いでいると、宗林寺の和尚さんがやってきて、「これは猿猴(えんこう)というものだ!」と言いました。
猿猴とは、猿に似た河童のことです。
和尚さんは馬をとって食べようとした猿猴に向かって「お前の命はこの和尚がにぎっている。もしこれから先、心を改めるなら助けてやろう。」と言い、「川の淵にあるあの大きな岩の上の青々と茂っている大木が枯れないうちは、人や動物に害を加えません。」と、猿猴は何度も謝り、約束をしたそうです。
和尚さんは「大岩に“南無阿弥陀仏”」の文字を掘っておくので、この字が消えたら自由にしてよい。」と猿猴を出羽川へ帰してやりました。
しかし、はやく自由になりたい猿猴は、夜な夜なその字を消そうと文字をなぞるので、ますます字は深くなり、いつしか猿猴も姿を消したそう。
岩の上の大木がある淵は“猿猴渕”と呼ばれ、長年風雪に耐えてきましたが、昭和の大水害の時に、崖が崩れて大木も流されてしまいましたが、住民のみなさんが流された大木を拾い運び、今でも宗林寺敷地内に保存してあります。


